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[ テクニック ] モブ会話の作り方

2021-12-02 00:01:24

本記事は「ツクールフォーラムアドベントカレンダー Advent Calendar 2021」12月2日分の投稿記事です。

モブ会話とは?

「モブ(mob)」とは「群衆」といった意味で、RPGにおける「モブキャラクター」といえば、ストーリーに関わるメインキャラクターではない、町の人とかお城の兵士など一般のキャラを指します。

町の入口で「ここは○○の町です」と言ってくる女性や、井戸の周りを走り回る子供たち、今日の晩ご飯は何にしようか悩む主婦などが代表格でしょう。

彼らはメインキャラではないので、特に重要なことは喋りません。しかし、プレイヤーが話しかける以上、何かしら台詞を喋らせないといけません。

この台詞を「モブ会話」とか「モブ台詞」とか言いますが、このモブ会話を考えるのがけっこう苦手と言う人が多い印象です。

ただ私は、モブ会話を考えるのがむしろ楽しいし、割と得意だと思っているので、モブ会話の作り方について解説してみようと思います。

モブキャラに何を喋らせる?

そもそもモブキャラクターに何を喋らせればいいのでしょう。

最近のRPGでは、ストーリーの進行に関する情報はメインキャラたちの会話イベントで勝手に語られるため、モブキャラはあまり有益なことを話してくれない傾向にあります。

有益なことを話さないのでプレイヤーがモブキャラに話しかけることも少なくなり、話しかけるプレイヤーが少ないのでますますモブキャラに重要なことを喋らせないようになり……という負のスパイラル。

たわいない日常会話が悪いとは言いませんが、そんな台詞ばかりではモブキャラに話しかけるモチベーションも湧きませんし、何よりそんな台詞ばかり用意するのも大変です。

ストーリーのヒントや情報はメインキャラが全部話しちゃってるから、今さらモブキャラに喋らせる情報なんてありません、と言われるかもしれませんが、ヒントや情報はいくらでも考えられます。

ヒントや情報の種類

では、どんなヒントや情報が考えられるのか、具体的に見ていきましょう。

この町の情報について

まずは定番中の定番。

町の入口付近にいて「ここは○○の町です」と教えてくれる人。

これだって、この町が何という町なのかが分かる立派な情報です。

自分の作品では町に入った瞬間に町の名前が出るんで、そんな台詞いりません、という場合は、その町の特徴を一言添えてみるのはどうでしょう。

この町がどんな町なのか、一発で特徴を理解できるので、町の印象も深まります。

この台詞を言うキャラは、町の入口すぐの位置に配置するのが鉄則です。

ここは にぎわいの町。

家々が軒を連ね 世界中から人々が集まる

活気あふれる町ですわ。

ここは 山裾の村だ。

何にもない 村だけど

まあ ゆっくりしてって くれや。

ここは 砂塵の町。

砂漠の ど真ん中にある 町だ。

この町の詳細情報

上述のこの町の名前や一言特徴に続き、町に入って二番目くらいに遭遇するモブキャラに、もう少し詳しい町の情報を喋らせてみてはどうでしょう。

特に、異民族の村とか独自性の強い町の場合、その生活様式とか歴史とかを掘り下げた台詞があると、より印象が深まるのではないでしょうか。

こういった情報は攻略には直接関係ありませんが、かといって全く意味のない無駄な会話というわけでもなく、町の雰囲気作りに役立ちます。

かつて 草原を 転々としていた頃は

よく 野生動物に 襲われたものじゃったが

村に 定住してからは そんな危険も なくなった。

この町からは 東の大陸への 交易船が 出ているわ。

だから この大陸では あまり 見かけない

珍しいものが たくさん 入ってくるわね。

イベントに関わる人物・施設について

イベントが起こるキャラや場所があれば、それが町のどこにいる or あるのか、ヒントを出してあげると親切でしょう。

ストーリーに関わる重要人物であれば、その人についての性格や特徴などをモブキャラに喋らせておけば、いったいどんな人物なんだろう?という興味が湧きますし、実際に会った時の印象もより深くなります。

この町の 町長様は

いにしえの賢者 シルバー様の 末裔なんですって。

この先の 大きな お屋敷に お住まいよ。

え? ケージ爺さんだって?

ああ ケージ爺さんの 家なら

村はずれの 高台にある 一軒家だよ。

近くのダンジョンや次の町の情報

この町を拠点に攻略するダンジョンや、次に訪れる町の情報も重要です。

ダンジョンや次の町がどの方角にあるか、何か途中の目印はあるか、どんな特徴があるか、何か注意すべき点はあるかなど、プレイヤーに伝えるべき情報はたくさんあるはずです。

そして、これらの情報を一人の人に喋らせるのではなく、複数の人に分散して語らせるのがコツです。

一人の人だけに喋らせると台詞が長くなってしまいますし、聞き漏らしたら重大な情報ロスになります。その点、複数の人に分散して喋らせれば、一人あたりの台詞は短くて済みますし、一人ぐらい聞き逃しても大丈夫です。

下記の例では、次の目的地である賢者の墓というダンジョンの、(1)場所、(2)特徴、(3)注意点を、それぞれ3人のモブキャラに喋らせています。

この町の 北の 川と山脈を 越えた先に

いにしえの賢者 シルバーを 葬った

賢者の墓と 呼ばれる ほこらが あるそうだ。

賢者の墓の 入口は 封印されているそうよ。

いにしえの賢者 シルバーの 血を引く者にしか

その封印は 解けないんですって。

噂によると 賢者の墓の 内部は

侵入者を 防ぐため

あちこちに 落とし穴が 作られてるらしいぜ。

ここまではストーリーに直接関わってくるヒント・情報なので、比較的考えやすいかと思います。

ただこれだけでモブ会話が全て埋まるわけではありません。

他にどんな情報が考えられるでしょうか。

この町で手に入る装備品やアイテムの特徴

新しい町を訪れた時の楽しみの一つが、新しい装備品やアイテムの物色。

しかし、お店に入ってズラッと並んだ商品リストを前に、いったいどれを買えばいいんだ……と途方に暮れることがよくあります。

特に後半になるにつれ、単純な能力値だけでなく、様々な特殊効果や耐性を持った装備品も多数登場します。

もちろんアイテムの説明欄に特徴などは書いてあることが多いですが、その効能がよく理解できなかったり、見落としてしまったりということはあり得ます。

装備品の特徴などをモブキャラに詳しく説明させれば、有用性などもよく理解できるのではないでしょうか。オススメの装備品などを語らせれば、装備選びの参考になるでしょう。

仕留めた 獲物は あたいが 出刃庖丁で 掻っ捌く。

出刃庖丁は 普通のナイフと 違って 斬る武器だけど

この辺の 魔物なら 斬るだけで 威力は 十分だわ。

覚醒のオルゴールというものを 使えば

眠らされた 仲間を 起こせるらしいですな。

何回か 使うと 壊れてしまうそうですがね。

覚えるスキルの説明

市販のゲームであれば攻略本や攻略サイトが充実していて、どのレベルでどんなスキルを覚えて、どんな効果なのか、というのを事前に知ることができます。

しかしフリーゲームではそういう情報は基本的に分かりません。次のレベルでどんなスキルを覚えるのかはもちろん、そもそもこのゲームにどんなスキルが出てくるのかすら、プレイヤーは分からないのです。

そんな時、この町に到達する推奨レベル前後で覚えられるスキルの説明をしてくれるモブキャラがいれば、そろそろこういうスキルが覚えられるんだな、ということが分かるので安心感に繋がります。

また、スキルの説明欄だけではその効果が分かりにくかったりもします。

どういうシーンで有効なのかなどをモブキャラに説明させれば、使ってみようという気にもなりますし、デメリットがあるならそれを説明させておけば、注意して使おうという気になります。

たくさんの 魔物に 取り囲まれても

ファイアブレスの 魔法さえ 使えれば

一掃できるから 怖くないわ。

とは言っても MPを かなり 消費するから

そんなに バンバンは 使えないわね。

斧のスキルで 覚えられる 一刀両断の 技は

敵の防御力を 無視して ダメージを 与えられるぞ。

装甲が固い敵には 打って付けだな。

付近に出現する敵の特徴

あとは、町の近くやダンジョンで出現する雑魚敵の情報を喋らせるのも手です。

特に、強力な技を放ってくる敵や嫌らしい行動をする敵については、その危険性や弱点があらかじめ分かっていれば対処のしようがあります。

これが分からないと初見殺しとか理不尽な印象を与えてしまいますので、少し雑魚戦をホネのあるものにしたいと思っている場合には極めて有効です。

ヒグマは すさまじい攻撃力が 脅威ですな。

しかも 時々 痛恨の一撃を 繰り出してくるので

体力は 常に 気を配られた方が よろしいかと。

ベビーデーモンって 奴を 甘く見るなよ。

時々 ファイアブレスの 魔法を 唱えてくる 強敵だ。

複数 現れた時は まず 数を減らした方が いいぜ。

軍隊ガニって 奴は ハサミは鋭いし 甲羅は固いし

おまけに どんどん 仲間を 呼びやがる。

弱点は 槍か ナイフで 一突きして やることだな。

属性や状態異常の情報

最近の作品では、属性や状態異常について、序盤の町の本棚で解説されるようになっていたり、「戦闘指南書」みたいなアイテムを作っていつでも読めるようになっていることが多いようです。

しかし、そんな序盤から属性や状態異常がたくさん登場するとも思えませんし、そんなにたくさんの情報を一度に覚えきれないでしょう。

属性を考えることが重要な敵や、その状態異常を使ってくる敵が登場するあたりで、モブキャラにその情報を喋らせれば十分ではないでしょうか。

炎は氷に弱くて 氷は炎に弱い。これ 常識。

つまり 炎を操る魔物には 氷の魔法が 有効で

氷を操る魔物には 炎の魔法が 有効ってことね。

星見の山には マヒ毒を持つ 魔物が 出るらしい。

麻痺させられると しばらくの間 体がしびれて

身動きが とれなくなっちまうから 気を付けろよ。

能力値の説明

さすがに攻撃力や防御力の説明まではいらないと思いますが、敏捷性や運などは作品によって違う使い方がされている場合もあります。

説明書などで説明しているかもしれませんが、説明書などはあまり読まれないかもしれません。

モブキャラに説明させれば、どういうシーンでその能力値を重視すべきかなど、もう少しプレイヤー目線での解説ができるのではないかと思います。

運が強いと 毒や眠りなどの 状態異常に

かかりにくく なるんだって。

まあ 絶対じゃ ないらしいけどね。

敏捷性が 高い者ほど 先に 行動できるぞ。

敵よりも 素早く 動ければ

余計な ダメージを 食らわずに 済むってことだな。

TPは 戦闘開始時に 50までの間で 割り振られるわ。

ダメージを 受けたり 与えたりすると 増えていって

強力な 特殊技が 打てるようになるのよ。

ゲームシステムの説明

その他、ゲームシステムに関する説明も、説明書だとかチュートリアルなどで無味乾燥に説明されるよりは、モブキャラの台詞として説明された方が、ずっと理解しやすいでしょう。

作品独自のシステムはもちろんですが、「装備」メニューといったRPGに共通の基本的なシステムも、説明しておくに越したことはありません。

フリーゲームを遊ぶ層でそんなことも知らない人はいないのではと思うかもしれませんが、実況プレイなんかを見ているとけっこう分かっていない人はいます。

少しメタな台詞になってしまうかもしれませんが、メタ発言を避けようとして分かりにくい表現になっては本末転倒なので、そこは割り切った方がいいと思います。

武器や防具は ただ 所持しているだけでは

何の役にも 立ちません。

必ず 装備をなさってください。

からくり屋敷の中には 魔物が 住んでおっての。

普段は 姿が見えぬのじゃが

接触すると その姿を現すそうじゃ。

たんすや戸棚 ツボやタルを 見つけたら

中を 調べてごらんよ。

たまに ちょっとしたものが 手に入るかもね。

モブ会話作成のコツ

以上、見てきたように、モブキャラに喋らせる情報はいくらでもあります。

特に装備品やスキル、敵キャラの情報などは、あまり取り入れている作品は少ないように思いますが、数が多いのでモブ会話の量産に役立ちます。

私の場合、新しい町を作る際に、まずその町で得られる情報をざっと箇条書きにします。内容は上記で見てきたような、町の情報、イベントに関わる情報、装備品やスキル、敵の情報などです。

次にそれらを、どんなキャラ(性別・年代・職業など)に喋らせるかを意識しながら、台詞に起こしていきます。

▲この町で得られる情報を箇条書き

▲箇条書きした情報を台詞に起こす

情報は小分けに

あと意識した方がいいのは、1人の会話はなるべく1画面、多くても3画面に収めることです。

会話が長くなる場合は、得てして情報量が多いものです。1回の会話で得られる情報量が多いと理解しづらくなります。「近くのダンジョンや次の町の情報」で解説したように、情報を小分けにして複数のキャラに情報を分散できないか、検討してみましょう。

例えば、東の○○洞窟に××という盗賊がいて、そいつが町の大事な△△というアイテムを盗んでいったという情報であれば、

  • 東に○○洞窟がある
  • ○○洞窟に××という盗賊がいる
  • ××が町の大事な△△というアイテムを盗んだ

という情報に分けて3人の人に喋らせます。

プレイヤーはこれら3人の情報を組み合わせて、「東の○○洞窟で盗賊の××を倒して△△を奪い返せばよい」ということが分かります。

たとえ簡単でもプレイヤー自身に「考える」という作業が生まれることで、能動的にプレイしている感が得られます。単に言われた通りに洞窟に行ってボスを倒すよりも、ずっと達成感が得られるでしょう。

日常会話と見せかけてヒント

「今日の晩ご飯は何にしようかしら」的な完全な日常会話が絶対悪とは言いませんが、なるべくなら避けたいです。

特に、システムの説明など基本的な情報が多数発生する序盤の町から、有益でない日常会話のモブキャラが登場すると、「このゲームは町の人に話しかけても無駄なんだ」というイメージを持たれてしまいます。

ベストなのは、たわいない日常会話と見せかけて、実は重要なヒントになっているという台詞です。

右は飼い猫を探す女の子の会話ですが、別にこのネコを探すイベントが発生するとか、見つけると何かアイテムをくれるというわけではありません。

ですが、このネコの居場所が実はダンジョンに向かうルートの重要なヒントになっています。

あまりヒント然とした会話ばかりでも、ヒントを聞かされているような感じになって、それはそれでプレイを強制されている感が出てしまいます。

こういうさりげない会話でヒントが得られるのが理想ですね。

おわりに

モブ会話が苦手という人は、そもそもモブキャラに何を喋らせればいいのか分からないという人が多いのではないかと思います。

この記事を参考に、モブキャラにも有益なことを喋らせて、ただのモブキャラも作品を彩るキャラクターの一人として、命を吹き込んであげてください。

それでは読んでいただきありがとうございました。

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